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チョーサーの詩学―中世ヨーロッパの<伝統>とその<創造>
河崎征俊

チョーサーは一元的世界という価値観のなかに生きながらも、想像力の面では、二元的世界の価値観を自由自在に扱いながら、それを大地に根づかせることができる詩人であった。彼は、例えば、アリストテレス、キケロ、ウェルギリウス、オウィディウス、ボエティウス、『薔薇物語』の詩人、ダンテおよびボッカチォなどといった<権威>(“auctorites”)を読書によって吸収し、それを<記憶の鍵>を使って作品のなかに解放することができる詩人であった。いや、それだけではない。彼は現実の世界で起こった事柄を見たり聴いたりしながら、、それを肌で感じ取り、一歩下がった態度で観察しながら、それを創作の対象にすることができる詩人であった。ある角度から見ると、彼はこの地上の住人を幅広くリアリスティックに描写しえた詩人ということになるが、角度を変えて見ると、彼は、第八天球からこの地上を見下ろしながら、<空の空>(“al vanite”)を体得しえた人間だったからである。(後書きより)

ISBN 978-4-87571-583-2
判 型 四六判・上製
頁数 488ページ
定 価 4,968円(税込)
刊行年 2008年



<目 次>
序論
第 I部
第1章 Chaucerにおけるdualismの意識 ──“one” と “many”をめぐって
第2章 “A preve by experience”(HF, II.873): Chaucerに見る<権威>と<経験>     
第3章 Chaucerにおける orality──フォーク・カルチャーの視点から
第4章 Chaucer 批評における<伝統>と<創造>──D. S. Brewer の批評法
第II部
第1章 「場」としての<庭園>の意義をめぐって──Boccaccio からChaucerへ
第2章 “the craft so long to lerne” : The Parliament of Fowls における<愛>と<芸術>の主題
第3章 “What thing is that?” : Troilus and Criseyde における<話し言葉>の役割とその効果
第4章 Chaucer の “mutability”のトポスについて──Troilus とBoethiusを中心に
第Ⅲ部
第1章 “tempus” と “aeternitas” : The Knight’s TaleにおけるChaucerの<時間>の意識
第2章 “This worldes transmutacioun” : The Knight’s Taleにおける<場>(loci )の意義
第3章 Chaucerのナラティヴ・ゲーム──<喜劇的物語>を中心にして
第4章 The Canterbury Talesのいわゆる宗教的物語に見られる<喜劇性>
第5章 The Reeve’s Taleにおける“wheel”のモチーフ
第6章 The Shipman’s Taleにおけるドライ・アイロニー
第7章 “blynde prosperitee” : The Monk’s Taleにおける<悲劇>の意味
Geoffrey Chaucer(ジェフリー・チョーサー)年譜
参考文献